2026年1月05日

歯科治療と耳下腺炎の意外な接点
こんにちは。瀬谷アクロスデンタルクリニック院長の黒﨑です。
先日、私自身が「耳下腺炎(じかせんえん)」と思われる症状を経験しました。耳の下から頬にかけての腫れと、噛むときや酸っぱいものを口にしたときの強い痛み。まるで歯や顎関節の問題かと思いきや、原因は「唾液(だえき)腺」の一つである「耳下腺(じかせん)」の炎症でした。
実はこの唾液腺は、お口の健康を保つ上で非常に重要な役割を果たしており、歯科医院とも深い関わりがあります。今回は、私の経験も交えながら、この「耳下腺炎」について、お口の健康との関係性から解説します。
唾液腺とは? 3つの「お口の門番」
私たちの口の中には、主に「唾液腺(だえきせん)」と呼ばれる大きな唾液を作る器官が左右に3つずつ、計6つあります。これらを「大唾液腺」と呼びます。
・耳下腺(じかせん): 耳の下から頬にかけて。最も大きく、さらさらした唾液を作ります。
・顎下腺(がっかせん): 顎の骨の下あたり。
・舌下腺(ぜっかせん): 舌の裏側。
これらの唾液腺は、常に唾液を分泌し、口の中を洗い流したり、食べ物を湿らせたりする大切な役割を担っています。
耳下腺炎とは?
耳下腺炎は、この耳下腺に炎症が起きる病気です。
耳下腺炎の主な症状は以下の通りです。
・耳の下から頬にかけての腫れと痛み
・特に食事の際(噛む動作)や、梅干しなど酸っぱいものを口にして唾液の分泌が誘発されるような時に、痛みが増すのが特徴です。(※私自身もこの症状を強く感じました。)
・腫れた部分に熱感がある(触ると熱い)
・全身性の発熱を伴う場合もありますが、今回の私のように全身の発熱がなく、炎症が起きているサインとして局所的な熱感が現れるケースもあります
歯科医院へ来院されるケースと鑑別点 🔍
痛みや腫れの場所が、ちょうど顎関節や奥歯の周り(特に親知らず付近)に近いため、「親知らずの周りが腫れた」「顎関節症が悪化した」と勘違いして歯科医院を受診される方が多くいらっしゃいます。
しかし、歯科医師は以下の点を確認し、症状の原因を正確に見極めます。
①口腔内の所見の確認: 親知らずの炎症や歯周病の場合であれば、通常は口腔内の歯肉にも腫れや発赤が見られます。今回の私自身の場合では、口腔内には目立った腫脹や発赤は無く、症状が耳下腺(耳たぶの下、頬の奥)に限定されていました。
②腫れの位置と形状: 腫れが顎関節や歯肉ではなく、耳下腺の解剖学的形状に沿って限局していました。
以上の事から、今回の自身のケースは耳下腺炎であると判断しました。
このように、問診と口腔内所見を総合的に確認することで、患者様の症状が歯・顎・唾液腺のどこから来ているのかを正確に見極めることが、歯科医院の重要な役割です。必要に応じて、耳鼻咽喉科などの専門医への連携も速やかに行います。
耳下腺炎の原因と歯科との関わり
耳下腺炎は、大きく分けて「感染性」と「非感染性」に分けられます。
①感染性の耳下腺炎(ウイルス性・細菌性)
感染性のものは、さらにウイルス性と細菌性に分類されます。
1.ウイルス性(おたふくかぜなど):
代表的なものは「流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)」で、ムンプスウイルスによる感染です。通常、全身性の発熱を伴い、両側が腫れることが多いです。
2.細菌性:
口腔内の細菌が唾液腺の導管をさかのぼって感染することで起こります。特に体調不良や唾液分泌量が減少している時にリスクが高まり、全身性の発熱を伴わず、局所的な強い熱感や痛みを伴うことが多いです。(私自身が経験した症状もこちらに近いです。)
②非感染性の耳下腺炎(唾液の出口の「詰まり」)
唾液腺の導管に「唾石(だせき)」という結石が詰まり、唾液がうまく排出されずに炎症を起こすケースです。
唾石ができる部位について: 唾液腺の中で、耳下腺よりも顎下腺(がっかせん)の方が、導管が長く曲がりくねっていることや、唾液の成分の濃さから、唾石ができやすいことが知られています。しかし、耳下腺にも唾石は発生する可能性があり、注意が必要です。
※今回の私の場合ではCT撮影も行いましたが唾石は確認できませんでしたので、唾石症は診断から除外しました。
予防と対策:注意すべき点と健康な唾液のために
耳下腺炎の予防、そして再発防止には、「唾液の流れを良くし、お口の中を清潔に保つこと」が重要ですが、発病中は安易な自己処置を避けるべきです。
⚠️ 発病中の注意点(重要)
痛みや腫れ、熱感が強い炎症の急性期(発病中)には、安易なマッサージや強く圧迫する行為は避けてください。かえって炎症を悪化させたり、細菌を広げたりする危険性があります。まずは安静にし、歯科医院や耳鼻咽喉科を受診してください。
① 唾液腺マッサージ(予防・回復期に): 炎症が治まった後や、予防のために、唾液腺(耳下腺や顎下腺など)を優しくマッサージし、唾液の分泌を促しましょう。
② 水分補給: こまめに水分を摂り、唾液が出やすい状態を保ちましょう。
③ 口腔衛生の徹底: 正しいブラッシングと定期的な歯科検診で、虫歯や歯周病を防ぎ、口の中の細菌数を減らすことが大切です。
📌 体のサインを見逃さずに
「顎が痛い」「耳の下が腫れた」と感じたら、それは歯や顎関節だけでなく、唾液腺がSOSを出しているサインかもしれません。
ご自身で判断が難しい場合は、まずはかかりつけの歯科医院にご相談ください。当院では、口腔内の専門家として、患者様の症状が歯・顎・唾液腺のどこから来ているのかを見極め、皆様の健康をサポートいたします。
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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