2025年12月08日

なぜ歯医者で「糖尿病」の話をするのか?
「糖尿病」と聞くと、内科の病気、生活習慣病といったイメージをお持ちでしょう。しかし、近年の医学・歯学の進歩により、歯周病と糖尿病は互いに影響し合う「双方向性の悪循環」にあることが、明確にわかってきました。
1.糖尿病が歯周病を悪化させるメカニズム
血糖値が高い状態(高血糖)が続くと、全身の健康に悪影響を及ぼしますが、お口の中にも以下のような影響が出ます。
・免疫力の低下: 高血糖は、細菌と戦う免疫細胞の機能を低下させ、歯周病菌が増殖しやすく、炎症が重症化しやすい状態にします。
・血流の悪化と治癒の遅延: 糖尿病による血管障害は歯ぐきの血流も悪化させ、歯ぐきが傷ついても修復が遅れ、歯周病の進行を早めます。
2.歯周病の慢性炎症が糖尿病を悪化させる
歯周病は、歯ぐきの中で作られる炎症性物質(サイトカインなど)が血管を通じて全身に流れ出ることで、全身に影響を及ぼします。これらの物質は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを妨げる(インスリン抵抗性)ため、血糖コントロールを難しくし、糖尿病をさらに悪化させる原因となります。
【この10年で変わった新常識】
歯周病は「第6の合併症」へ。医科と歯科の連携が必須に
過去10年間の研究の蓄積により、歯周病は単なるお口の病気ではなく、糖尿病の治療に欠かせない要素として、その公式な位置づけが大きく変わりました。
1.「第6の合併症」としての認知 従来、糖尿病の「三大合併症」は網膜症、腎症、神経障害でしたが、現在では歯周病は、心血管疾患などに並ぶ「糖尿病の第6の合併症」として、日本の学会や国際的な組織でも公式に認知されています。
2.「糖尿病連携手帳」への歯科欄追加 この関連性の重要性から、現在、糖尿病の患者様にお渡しする『糖尿病連携手帳』には、歯科での検査結果や治療状況を記載する欄が設けられています。これは、「血糖値を安定させるためには、歯科治療が不可欠である」という共通認識が確立した証拠です。
3.【最新の知見】科学が証明した歯周治療の全身メリット
・併症リスクの低減(人工透析リスク)
東北大学の研究では、歯周病治療を定期的に受けている糖尿病患者は、人工透析が必要となる糖尿病性腎症の進行リスクが、32~44%低いことが明らかになりました。定期的な歯科治療が、腎臓の健康を守ることにもつながることが示された、非常に注目すべき知見です。
文献:Kusama, T. et al. (2025). Journal of Clinical Periodontology.
・血糖コントロールの改善(歯間ケアの重要性)
歯周病治療によるHbA1cの改善効果は以前から知られていましたが、最新の研究では、フロスや歯間ブラシなどを用いた週3回以上の歯間ケア習慣が、2型糖尿病患者の血糖値を安定させることと関連することが示されました。日々のセルフケアも、立派な糖尿病対策なのです。
文献:Minami, C. et al. (2025). Diabetes Spectrum.
4.あなたに今すぐできること
全身の健康を守るために、以下のことを実践してみてください。
・毎日の「歯間ケア」を徹底する: 歯磨きだけでは歯周病菌を十分に除去できません。最新の研究が示す通り、フロスや歯間ブラシを日々の習慣に取り入れてみてください。
・定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア: 糖尿病をお持ちの方にとって、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアは、「歯を守るため」だけでなく「血糖管理」のための必須の治療です。3か月に一度の歯科医院受診をお勧めいたします。
瀬谷アクロスデンタルクリニックからのお願い
もしあなたが糖尿病、またはその予備軍だと診断されているなら、ぜひ一度、その旨を当クリニックにお伝えください。内科の主治医との連携も可能ですので、あなたの全身の状態を考慮に入れた、最適な歯科治療とメンテナンス計画をご提案し、全身の健康をサポートいたします。
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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