2026年1月26日

「お父さんの入れ歯、もう何年も使っているけど大丈夫かしら?」
「最近、食事の時に『噛みにくい』って言っている気がする…」
ご高齢のご家族の入れ歯について、このような心配事を抱えていませんか?
多くの患者様、そしてそのご家族が「入れ歯は一度作ってしまえば、ずっと使える」と思われがちです。しかし、歯科医師の立場からお伝えすると、残念ながら「入れ歯が一生使えることは非常に稀」なのです。
今回は、なぜ入れ歯には寿命があるのか、そして長く快適に使うためにはご家族のどんなサポートが必要なのかについてお話しします。
1.「一生モノではない」2つの理由
① 入れ歯自体の変化(すり減り・劣化)
保険の入れ歯(プラスチック製)
保険診療で作る一般的な入れ歯は、主にプラスチックでできています。
毎日食事で使ううちに、靴底がすり減るように、噛む面が平らになったり、全体的に強度が落ちたりします。
基本的に「数年での修理や作り変えが必要になるもの」とお考えください。
自費の入れ歯(金属床など)
金属など耐久性の高い素材を使った自費の入れ歯は非常に丈夫です。
適切なケアを続ければ、保険の入れ歯よりも遥かに長く、場合によっては生涯に近い期間使える可能性もあります。
しかし、どんなに高価で丈夫な入れ歯でも、「それだけで一生安心」とは言いきれません。それが次の理由です。
② お口の変化(これが最も重要!)
ここが最大のポイントです。たとえ入れ歯が新品同様でも、それを受け入れる「ご本人のお口」は年齢とともに変化します。
お口の中で起こる主な変化
・歯茎(土手)が痩せる:
入れ歯を支える歯茎の骨や粘膜は、加齢とともに徐々に痩せて低くなっていきます。
・残っている歯の変化:
入れ歯のバネをかけている歯が虫歯になったり、歯周病でグラグラしたりすることがあります。
「昔買ったピッタリの靴が、足の形の変化で合わなくなる」のと似ています。
ご本人が気づかないうちに土台となるお口が変化し、入れ歯との間に隙間ができてしまうのです。
2.ご家族ができる!かんたんチェックリスト
「痛くないから大丈夫」とご本人が言っていても、実は無理をして使っているケースが少なくありません。日頃の様子から、ご家族がサインに気づいてあげることが大切です。
✅ ご家族ができる!かんたん入れ歯チェックリスト
① 食事の様子 🍙
□ 硬いもの(おせんべい、漬物など)を避けている
□ 以前より食事に時間がかかるようになった
② 会話と発音 🗣️
□ 話すときに「フガフガ」と空気が漏れる音がする
□ 噛み合わせる時に「カチカチ」と音がする
③ 口元の見た目 👴
□ 口元のシワが深くなった気がする
□ 口全体が痩せて(くぼんで)見える
④ 入れ歯の管理 🪥
□ 入れ歯安定剤を大量に使っている
□ 入れ歯の汚れや着色が目立つ
もし一つでも当てはまる場合は、入れ歯が合わなくなっている可能性があります。
3.長持ちの秘訣は「壊れる前の微調整」
「一生モノではない」とお伝えしましたが、決して「すぐにダメになる」という意味ではありません。
大切なのは、「ご本人が気づかない程度の小さな変化」のうちに、歯科医院でプロのチェックを受けることです。
・痩せた歯茎に合わせて、入れ歯の内側を少し盛る
・バネの緩みを調整する
・全体の噛み合わせのバランスを整える
これらは「修理(リペア)」で対応できることが多く、大掛かりな作り直しをせずに済みます。
4.「壊れてから」では遅い?賢い作り替えのタイミング
ご家族にぜひ知っておいていただきたいのが、「今の入れ歯が使えているうちに、次の入れ歯を作るメリット」です。
入れ歯が完全に壊れたり、合わなくなってからの来院では、新しい入れ歯が完成するまでの数週間、「入れ歯がない(まともに噛めない)期間」ができてしまいます。
高齢の方にとって、食事がとれない期間があることは、体力や気力の低下に直結する大きなリスクです。
今の入れ歯がまだ使えているうちに新しい入れ歯を作り始めれば、完成までの間も普段通り食事ができますし、新しい入れ歯への移行もスムーズです。
また、古い入れ歯を「予備(スペア)」として保管しておけるため、万が一のトラブル(紛失や破損)の際も安心です。
せっかく新しく作るなら…「より快適」な選択肢も
もし、新しい入れ歯の作成や作り変えを検討されるなら、このタイミングで「素材を見直す」という選択肢もあります。
例えば、土台の一部に金属を使用した入れ歯(自費診療)は、保険のプラスチック製に比べて非常に丈夫で、変形も少ないため、より長持ちしやすいという特徴があります。
また、耐久性だけでなく、
・薄く作れるため、口の中の違和感が少ない
・食べ物の熱が伝わりやすく、食事が美味しく感じる
といったメリットもあります。「食べることは生きること」ですから、ご家族の生活の質(QOL)を考える上で、こうした選択肢があることも知っていただければと思います。
歯科医師からのアドバイス:医学的な視点から
最後に少し専門的なお話をします。
歯科医療の専門機関である「日本補綴(ほてつ)歯科学会」の診療ガイドラインにおいても、「義歯(入れ歯)を装着した後も、顎の骨や粘膜は経年的に変化し続ける」ということが前提とされています。
そのため、学会の指針では、変化するお口の状態に合わせて、継続的な管理とメインテナンス(調整や修理)が必要不可欠であると強く推奨されています。
どんな入れ歯を使っていても、「痛くなってから行く」のではなく、「痛くならないために行く」。
この意識の変化が、ご家族の「食べる楽しみ」と「健康」を守ります。
もし、何年も歯医者さんに行っていないようであれば、ぜひ「一度、調子を見てもらおうか」と声をかけてみてください。当クリニックでも、今の入れ歯の調整はもちろん、将来に向けたご相談も随時承っております。
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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