2026年3月30日

先日、ニュースメディア等で「若年層における口腔がん(特に舌がん)の増加」に関する話題が取り上げられ、注目を集めています。
「がんは高齢者の病気」「お酒やタバコを嗜む人がなるもの」 そうしたイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、近年のデータでは、これまでリスクが低いとされていた20代〜40代の若い世代、そしてお酒もタバコもしない方々の発症が増加傾向にあることが示されています。
今回は、このニュースの背景にあるデータと、実はそこに関係している「歯並び・顎の大きさ」のリスク、そして当院が導入する新しい予防的矯正システムについて解説します。
本当に増えている? 若年者の口腔がん
実際に、統計データでも若年層の口腔がんが増加している傾向が見て取れます。
例えば、大阪国際がんセンターのデータ分析では、口腔がん患者全体に占める若年者(主に40歳未満)の割合が、約20年間で倍増しているという報告もあります。
また、関連する学会などでも、特に「舌がん」において若年層や女性の罹患数が増加傾向にあることが指摘されています。
なぜ若い世代で増えているのか?
通常、口腔がんの最大のリスク因子は「喫煙」と「過度な飲酒」です。
しかし、近年増えている若年性の患者さんには、これらの習慣がないケースも少なくありません。
そこで注目されているのが「慢性的な機械的刺激」です。
1.歯並びの影響: 歯が内側に倒れていて常に舌に当たっている
2.狭い顎(小顎): 顎が小さく、舌が収まるスペースが足りないため、常に歯に押し付けられている
3.誤咬(ごこう): 食事中などに頻繁に舌を噛んでしまう
こうした「弱い刺激」であっても、長期間同じ場所に繰り返されることで細胞が傷つき、がん化の引き金になる可能性があると考えられています。

「噛まない」ことによる顎の未発達とリスク
現代の食生活の変化——つまり、成長期に「硬いものを噛む」機会が減ったことにより、現代人は顎の発育不足(小顎)になりがちです。
顎が十分に育たないと、舌が収まる部屋(舌房:ぜつぼう)が狭くなります。
行き場を失った舌は、無意識のうちに常に歯に押し付けられたり、擦れたりすることになります。
これは将来的な口腔がんのリスク因子となるだけでなく、いびきや呼吸、嚥下機能にも悪影響を及ぼしかねません。
将来のリスクを減らすために、今できること
口腔がんの予防、そしてお口の健康を守るためには、日々のケアに加えて以下のポイントが重要です。
【セルフチェックと定期検診】
「2週間以上治らない口内炎」や「舌のしこり」がないか確認し、定期的に歯科医院でプロのチェックを受けましょう。
【お口の環境を整える】
欠けて尖った歯や、合わなくなった被せ物・詰め物は放置せず、適切に治療して舌への刺激をなくすことが大切です。
【お子様の顎の成長を見守る】
将来のリスクを減らすためには、小児期からの「顎の適切な育成」がカギとなります。
当クリニックでは、虫歯の治療や被せ物の調整はもちろん、お子様の顎の成長に関するご相談も承っております。
また、今後「お子様の顎の適切な発育をサポートする新たな取り組み」も準備中ですので、改めてお知らせいたします。
「少し舌が擦れて痛い」「うちの子、顎が小さいかも?」など、気になることがあれば、どうぞお気軽に当クリニックへご相談ください。
【参考文献・エビデンス】
[1] 若年者口腔がんの増加傾向について 大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)の「大阪がん登録」データ分析において、1975年から2015年にかけての長期推移を見ると、口腔・咽頭がんにおける若年者(20〜39歳)の罹患比率は上昇傾向にあり、特に舌がんにおいてその傾向が顕著である。 (出典:大阪府がん登録データおよび関連する疫学研究報告より)
[2] 慢性的な機械的刺激と発がんリスク 不適合な補綴物や傾斜した歯牙、鋭縁部による舌粘膜への慢性的な機械的刺激(Chronic Mechanical Irritation)は、口腔扁平上皮がんの重要なリスク因子の一つとされる。特にアルコールやタバコなどの化学的刺激因子を持たない若年者・女性症例において、その関与が強く疑われている。 (出典:日本口腔外科学会、日本口腔腫瘍学会等における臨床報告より)
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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