2026年6月03日
連日のようにニュースで報じられるイーロン・マスク氏のSpaceXの躍進や、月面探査「アルテミス計画」。一昔前はSFの世界だった「宇宙」が、いよいよ現実のものとなりつつあります。
当コラムでは以前、宇宙飛行士やパイロットと虫歯の関係(航空性歯痛)について解説しました。
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では、実際に宇宙空間に飛び立った後、彼らはどのようにして歯の健康を保っているのでしょうか? 今回は、知られざる「宇宙での歯磨き」と、もし「宇宙で虫歯が痛くなったらどうするのか?」という疑問について、より詳しく迫ります。
無重力空間での歯磨きはどうやるの?

私たちが毎日当たり前のように行っている歯磨き。水を口に含んで、うがいをしてペッと吐き出しますよね。しかし、水がふわふわと浮遊してしまう無重力状態の宇宙船内では、この「うがいをして吐き出す」ことができません。
では、宇宙飛行士はどうしているのでしょうか?
実は、宇宙空間では「そのまま飲み込める(または飲み込んでも安全な)歯磨き粉」を使用しています。少量の水で歯を磨いた後、口の中の泡や汚れをティッシュや専用のタオルで拭き取るか、そのまま飲み込んでしまうのが一般的です。
これには明確な理由があります。無重力空間で吐き出した水滴や飛沫が船内を浮遊すると、コンピューターなどの精密機器の内部に入り込み、ショートや重大な故障を引き起こす危険性があるためです。
水が非常に貴重であると同時に、少しのミスが命取りになる宇宙船内ならではの厳格な工夫と言えます。地球で毎日たっぷりの水でうがいができ、周囲を気にせず吐き出せるのは、実はとても恵まれた環境なのです。
もし宇宙で「虫歯」が痛くなったら…どうなる?
以前のコラムでも触れた通り、宇宙空間への移動中や宇宙服の中など、気圧が変化する環境では、歯の内部の空気が膨張して激痛を引き起こす「航空性歯痛」のリスクがあります。そのため、宇宙飛行士は出発前に完璧に歯の治療を済ませておかなければなりません。
しかし、長期間のミッション中に、もし急に歯が痛くなったり、詰め物が取れたりしたらどうなるのでしょうか?
国際宇宙ステーション(ISS)には、地球にあるような立派な歯科用の治療チェアやドリルはありません。そのため、基本的には痛み止めや抗生物質による「応急処置」が限界となります。
それでも痛みが治まらない最悪のケースに備え、実は宇宙飛行士たちは、地上で「仲間同士で歯を抜く訓練」などの医療訓練を受けてから宇宙へ向かいます。
遠い宇宙の果てで、歯科医師ではない仲間に歯を抜かれる……想像しただけでも冷や汗が出ますね。
宇宙のような極限環境では「予防」こそが最強かつ唯一の治療法なのです。
いつか行くかもしれない宇宙旅行に向けて
「自分は宇宙に行く予定なんてないし…」と思うかもしれませんが、気圧の変化による歯痛(航空性歯痛)は、飛行機での旅行中や、高い山への登山中にも起こり得ます。
また、宇宙開発がこのまま進めば、数十年後には一般人が海外旅行に行くような感覚で宇宙旅行を楽しめる時代が来るかもしれません。その時、直前になって「お口の環境が悪いから行けません」となっては悲しいですよね。
地球にいる今だからこそ、最高のケアを!
重力があり、新鮮な水でうがいができ、最新の設備でプロの歯科医師に診てもらえる地球の環境は、歯の健康を守る上で最高の環境です。
宇宙飛行士が命がけで徹底的な予防を行うように、私たちも日頃のセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケア(定期検診)を欠かさないことが大切です。
痛みが出る前の「予防」が最も確実な健康への投資であることは、地球上でも宇宙空間でも変わりません。ぜひ次回の定期検診で、あなたのお口の中を隅々までチェックさせてください。いつか来るかもしれない「宇宙旅行」に備えて、今から良い口腔状態を保ちましょう。
【参考文献・参考資料】
1.JAXA(宇宙航空研究開発機構) 「宇宙での生活・健康管理」に関する公開資料
2.日本宇宙航空環境医学会 航空宇宙医学における歯科的知見
3.P. Axelsson et al., “The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults,” J Clin Periodontol, 2004.(※予防の重要性を示す既存の引用文献の例として追加)
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