2026年6月13日
「泣いている子どもを一人で診察室に入れるなんて、かわいそう…」
「私がそばで手を握ってあげたほうが、安心するのではないか?」
初めての歯科治療や、まだ小さなお子さんをお持ちの保護者の方から、このようなお声をよくいただきます。不安がる我が子のそばにいてあげたいと思うのは、親として当然の愛情です。
しかし、当クリニックでは治療の際、あえて保護者の方には待合室でお待ちいただき、お子さんだけで診療室に入っていただく「母子分離(ぼしぶんり)」をお願いすることがあります。
これは決して「治療の邪魔になるから」という理由ではありません。日本小児歯科学会でも、お子さんが安全に治療を受け、自立心を育むための重要なステップ(行動調整法の一つ)として、その意義が認められています。
親の顔を見ると「甘えたくなる」子どもの心理
普段はしっかり者なのに、お母さんやお父さんの顔を見た途端に泣き出したり、ワガママになったりすることはありませんか?
子どもにとって保護者の方は「絶対的な安心の拠点(安全基地)」です。保護者の方がそばにいると、子どもは「泣いてアピールすれば、大好きなママ(パパ)がこの嫌な状況から助け出してくれるかもしれない!」と期待し、甘えからかえって激しく泣いたり、暴れたりしてしまうことが多いのです。
小児歯科学会の指針から見る「母子分離」の3つの目的
日本小児歯科学会では、お子さんがスムーズに歯科治療を受けられるように導くアプローチを「行動調整」と呼んでいます。その中でも、3〜4歳頃からの「母子分離」は以下の理由から非常に有効とされています。

歯科医師と直接の「信頼関係」を築くため
保護者の方がそばにいると、歯科医師が「お口を開けてね」と声をかけても、子どもはチラチラと親の顔を見て指示を仰ごうしたりします。
母子分離をすることで、子どもは「今は先生のお話を聞く時間だ」と集中モードに切り替わります。直接コミュニケーションを取り、「先生の言う通りにしたら痛くなかった、怖くなかった!」という経験を重ねることで、医療スタッフとの間に強い信頼関係が生まれます。
確実で「安全」な治療環境を守るため
お口の中の治療では、高速で回転する機械などを使用します。保護者の方へ助けを求めて急に顔を動かしたり、手を伸ばしたりすると、思わぬケガにつながる恐れがあります。お子さん自身に落ち着いてもらい、安全・確実な治療を行うためには、治療に集中できる環境づくりが不可欠です。
「一人でできた!」という自信と自立心を育むため
個人差はありますが、3歳を過ぎる頃から言葉の理解が進み、少しずつ我慢や社会性が身についてきます。
最初は泣きながら診察室に入ったお子さんも、親元を離れると意外なほどケロリと泣き止み、大きなお口を開けて頑張れることがよくあります。
自分の力で「歯医者さん」という壁を乗り越えた経験は、子どもにとって大きな自信となり、精神的な自立を力強く後押しします。
瀬谷アクロスデンタルクリニックからのお願い
もちろん、年齢や発達のペースは一人ひとり異なります。当クリニックでは、無理やり引き離すようなことはせず、お子さんの成長段階やその日のご様子を見極めながら、最適なタイミングで母子分離をご提案しています。
そして、お子さんの「一人でできた!」を成功させるために、保護者の方にぜひお願いしたい大切な役割が2つあります。
笑顔で送り出すこと
「頑張っておいで!待合室で待ってるからね」と明るく送り出してください。親の不安な表情は、子どもに伝染してしまいます。
終わったら、大げさなくらい褒めること
治療が終わって待合室に戻ってきたら、「一人でできたね!」「かっこよかったよ!」と、結果だけでなく「一人で診察室に入れたこと」そのものを思い切り褒めて、ギュッと抱きしめてあげてください。
小児歯科での母子分離は、お子さんが一つお兄さん・お姉さんになるための「成長の儀式」です。私たちと一緒に、お子さんの健やかな成長と自立を応援していきましょう。
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母子分離で心の自立を促すとともに、当クリニックではお子さんが少しずつ歯科医院に慣れていくための「スモールステップ」も大切にしています。
ぜひこちらのコラムもご覧ください。
▶「歯医者嫌い」にさせないために。当院が大切にしていること
【参考文献】
・日本小児歯科学会 編『小児歯科学 第6版』医歯薬出版
・日本小児歯科学会 広報委員会「小児の歯科治療における行動調整〜ご家族の方へ〜」
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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