2026年7月10日
こんにちは。瀬谷アクロスデンタルクリニックです。
仕事の追い込みや試験勉強、あるいは長時間のドライブの際など、気合を入れるために「エナジードリンク」を愛飲している方は多いのではないでしょうか。
一時的な活力アップには頼もしい存在ですが、実は私たち歯科医師の目から見ると、エナジードリンクは「歯にとって非常にリスクの高い飲み物」です。
今回は、エナジードリンクが引き起こすお口の中の「負のトライアングル」について、科学的根拠(エビデンス)に基づいた視点から詳しく解説します。

1.強い酸による「エナメル質の溶解」(酸蝕症)
歯の表面を覆うエナメル質は、人間の体の中で最も硬い組織ですが、「酸」には非常に弱いという弱点があります。
お口の中のpH(ペーハー:酸性・アルカリ性の度合い)は通常ほぼ中性ですが、pH5.5を下回ると歯が溶け始めます(これを臨界pHと呼びます)。 エナジードリンクの多くは、クエン酸やリン酸が含まれており、pH2.5〜3.5と非常に強い酸性を示します。そのため、むし歯菌がいなくても、飲み物が触れるだけで歯の表面が直接溶け出してしまう「酸蝕症(さんしょくしょう)」を引き起こす原因となります。
2.大量の糖分による「むし歯菌の活性化」
エナジードリンクには、疲労回復や血糖値を上げるために大量の糖分(ショ糖やブドウ糖)が含まれています。製品によっては、1缶に角砂糖10個分以上の糖類が入っていることも珍しくありません。
お口の中に潜むむし歯原因菌(ミュータンス菌など)は、この糖分をエサにして「酸」を作り出します。 つまり、1の理由ですでに表面が溶けて弱くなっている歯に対して、むし歯菌が作り出した酸が追い打ちをかけるため、通常よりもはるかに速いスピードで歯の破壊(脱灰)が進行してしまうのです。
3.カフェインが奪う「唾液のバリア機能」
そして、エナジードリンク特有の最大のリスクが「カフェイン」です。
本来、私たちのお口の中には、酸を中和して元の状態に戻す(緩衝作用)働きや、溶け出した歯の成分を修復する(再石灰化)働きを持つ「唾液」という強力なバリアがあります。 しかし、カフェインには強い利尿作用と、交感神経を刺激して唾液の分泌を抑える作用があります。エナジードリンクを飲むと、お口の中が乾燥しやすくなり、唾液による自浄作用や修復機能が著しく低下してしまいます。
酸と糖でダメージを受けた状態が、修復されないまま長時間放置されてしまう。これがエナジードリンクの最も恐ろしい点です。
歯を守るための「4つの対策」
とはいえ、「絶対に飲んではいけない」というわけではありません。
お口へのダメージを最小限に抑えるための工夫(ハームリダクション)をご紹介します。
ダラダラ飲みを避ける
時間をかけて飲むと、お口の中が常に酸性に傾き、歯が溶け続ける状態(脱灰)になります。飲むときは短時間で飲み切りましょう。
ストローを使用する
飲み物が直接歯に触れる面積と時間を物理的に減らすことで、酸蝕症のリスクを効果的に抑えることができます。
直後に「水」でうがいをする
お口の中に残留した酸や糖を洗い流し、低下したpHを素早く中性付近へ戻すための補助的な役割を果たします。
歯磨きは「30分」待ってから
酸に触れた直後のエナメル質は軟化しており、すぐ磨くと摩耗するリスクがあります。唾液の力で歯が落ち着くまで30分程待ちましょう。また、酸性に傾いたお口を素早く中和させる方策として、専用の洗口液の活用も有効です。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
▶︎ 話題の「ドバイチョコ」や「グミ」。流行を楽しむために知っておきたい“第3の習慣”
まとめ
エナジードリンクは「低pH」「糖」「カフェイン」という、歯にとって過酷な3つの要素が揃っています。習慣的に飲まれる方は、ご自身の歯を守るためのケアをぜひ意識してみてください。
瀬谷アクロスデンタルクリニックでは、悪くなってから削る事を最大限に回避するために、科学的根拠に基づいた「予防歯科」に力を入れています。「最近、冷たいものがしみる」「自分の歯の状態が知りたい」など、少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
【参考文献】
1.Lussi, A., Jaeggi, T., & Zero, D. (2004). The role of diet in the aetiology of dental erosion. Caries research, 38(Suppl. 1), 34-44.
2.Pinto, S. C., et al. (2013). Erosive potential of energy drinks on the dentine surface. BMC Research Notes, 6(1), 67.
3.特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 (2015). 『う蝕治療ガイドライン 第2版』.
瀬谷アクロスデンタルクリニック
〒246-0031 神奈川県横浜市瀬谷区瀬谷4-23-35 アクロスキューブ瀬谷1-1
TEL:045-489-7400