2026年8月26日
朝起きたときにアゴが疲れていたり、ご家族から「夜中に歯ぎしりをしていたよ」と指摘されたりした経験はありませんか?
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、専門用語で「睡眠時ブラキシズム」と呼ばれます。体重以上の強い力が無意識に歯やアゴにかかるため、放置すると「歯がすり減る・割れる」「被せ物が壊れる」「知覚過敏」「顎関節症」など、お口にさまざまな悪影響を及ぼします。
当クリニックでは、このような睡眠時ブラキシズムの対策として、就寝時に装着するマウスピース「ナイトガード」の作製をお勧めすることが多くあります。 今回は、このナイトガードの「本当の役割」についてお話しします。
当クリニックが「ハードタイプ」のナイトガードを採用している理由
ナイトガードには、ゴムのように柔らかい「ソフトタイプ」と、プラスチックのように硬い「ハードタイプ」があります。当クリニックでは、原則としてハードタイプ(スタビライゼーションスプリント)を採用しています。
これには明確な医学的根拠があります。「日本補綴(ほてつ)歯科学会」や「日本顎関節学会」といった専門機関の診療ガイドラインにおいても、睡眠時ブラキシズムによる歯の破損防止や歯周組織の保護には、硬質なハードタイプのナイトガードが推奨されているからです。
柔らかいソフトタイプは一見歯に優しそうに思えますが、噛みしめた時にグニャッとする感触が逆に無意識の「噛む意欲」を刺激してしまい、かえって筋肉を疲労させたり、歯ぎしりを助長してしまうケースがあることが分かっています。そのため当クリニックでは、ガイドラインに沿って力のコントロールに優れたハードタイプをご提供しています。
ナイトガードをつければ「歯ぎしり」は止まるの?
患者様からよく「ナイトガードをつければ、歯ぎしりそのものが治りますか(止まりますか)?」とご質問をいただきます。
結論から申し上げますと、ナイトガード自体に歯ぎしりを完全に止める(治す)効果はありません。
かつては「噛み合わせが悪いから歯ぎしりをする」と考えられていましたが、近年の数多くの睡眠研究や論文データにより、睡眠時ブラキシズムは脳(中枢神経)の覚醒反応やストレス、睡眠の質などが複雑に絡み合って起こる現象であることが解明されています。 つまり、お口の中にマウスピースを入れたからといって、脳からの「歯ぎしりをしなさい」という指令そのものを止めることはできないのです。
シートベルトやエアバッグと同じ「守る」ためのツール

「歯ぎしりが止まらないなら、つける意味がないのでは?」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。当クリニックでは、患者様にナイトガードの役割を「自動車のシートベルトやエアバッグ」に例えてご説明しています。
自動車のシートベルトやエアバッグは、「交通事故そのもの(=歯ぎしり)」を防ぐものではありません。しかし、万が一事故が起きてしまった際に、「ケガのリスクや命の危険(=歯が割れる、アゴを痛めるなどの破壊的なダメージ)」を最小限に防いだり軽減したりするという非常に重要な役割を持っています。
ナイトガードもこれと全く同じです。 歯ぎしりという「事故」の発生をゼロにすることはできなくても、ナイトガードという「盾」があることで、ご自身の天然の歯や、せっかく治療した綺麗な被せ物が身代わりとなって削れるのを防いでくれます。睡眠時ブラキシズムによる悪影響を防止するという観点において、非常に有用な治療法なのです。
おわりに
歯ぎしりは無意識に行われるため、ご自身でコントロールすることができません。 だからこそ、寝ている間の無防備な歯を守るためには、物理的なプロテクターであるナイトガードが必要不可欠です。
「もしかして歯ぎしりをしているかも?」「朝起きるとアゴがだるい」とお感じの方は、手遅れになって歯を失ってしまう前に、ぜひ一度当クリニックまでお気軽にご相談ください。あなたの大切な歯を一緒に守っていきましょう。
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【参考文献】
1.一般社団法人 日本補綴歯科学会 編 「補綴歯科診療ガイドライン」
2.一般社団法人 日本顎関節学会 編 「顎関節症患者のための初期治療診療ガイドライン」
3.Lavigne GJ, Kato T, Kolta A, Sessle BJ. “Neurobiological mechanisms involved in sleep bruxism.” Critical Reviews in Oral Biology & Medicine (2003) ほか、睡眠時ブラキシズム(SB)の微小覚醒(micro-arousal)に関する関連論文群
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