2026年9月15日

皆様、こんにちは。瀬谷アクロスデンタルクリニックです。
当クリニックには、「口内炎が痛くて食事がつらい」というお悩みで来院される患者様が数多くいらっしゃいます。その際、症状をしっかり確認した上で、「オルテクサー口腔用軟膏」などのステロイド塗り薬を処方することがあります。
患者様からよく「このお薬を塗ると、すぐに治りますか?」とご質問をいただきます。今回は、このお薬がどのように効くのか、そしてご自宅で安全に使っていただくための注意点について、科学的なデータ(エビデンス)に基づいて解説いたします。
軟膏は「治癒を促進し、治るまでの期間を短くする」お薬です
一般的な口内炎(アフタ性口内炎)の多くは、お口の粘膜で「過剰な炎症」が起きている状態です。
当クリニックで処方する軟膏には、この炎症を強力に鎮める成分が含まれています。過剰な炎症を強制的に抑え込むことで傷の広がりを防ぎ、結果として「自然に治るのを待つよりも早く回復させる(治癒期間を短くする)」という確かな科学的根拠(エビデンス)があります。炎症が早く引くことで、辛い痛みも結果として早く和らぎます。
お薬は「原因」をなくすわけではありません(根本治療と全身の健康)
ここで注意していただきたいのは、論文等でも示されている通り、お薬自体が「口内炎の原因そのものを根本から取り除くわけではない」ということです。これには大きく分けて「お口の中の原因」と「全身の原因」があります。
お口の中の物理的な原因
例えば、「虫歯で欠けて尖ってしまった歯」や「合っていない被せ物・入れ歯」が粘膜に当たり続けている場合、絶えず機械的な刺激が加わり続けるため、いくら軟膏を塗っても治りません。この場合は、尖った歯を滑らかにしたり、入れ歯を調整したりする「根本的な原因の除去」が必須となります。
全身の健康状態(治癒力の低下)
口内炎は「全身の鏡」とも呼ばれます。過労や睡眠不足、栄養の偏り(ビタミン不足など)、あるいは全身的な健康状態が悪化している場合、患者様ご自身の「生まれ持った治癒力(免疫力)」自体が不足しています。このような状態では、お薬で炎症を抑えても、ベースとなる体を治す力が足りていないため、どうしても治りづらくなってしまいます。

注意が必要なケース:塗ってはいけない口内炎
また、すべての口内炎にこのお薬を使って良いわけではありません。 ウイルス(ヘルペスなど)やカビ(カンジダ)などの「感染」が原因で起きている口内炎にステロイド軟膏を塗るのは大変危険です。薬の成分がウイルスの増殖を助けてしまい、かえって症状を悪化させてしまう恐れがあるためです。
そのため、「急にたくさんできた」「いつもと違う痛みがする」といった場合、当クリニックでは感染症のリスクを疑い、あえてお薬を処方しない、あるいはいったん様子を見るという判断をすることがあります。これは患者様の安全を第一に考えた、医学的にとても大切な見極めです。
ご自宅での正しい使い方と注意点
清潔な手で塗る
塗る前にはうがいをしてお口の中を清潔にし、手も綺麗に洗ってください。
水分を軽く拭き取る
患部が唾液で濡れすぎていると薬がつきにくいため、清潔なティッシュ等で軽くトントンと水分を拭き取ります。
すり込まない
清潔な指先や綿棒に米粒大ほどの軟膏をとり、患部を覆うように「優しく乗せる」のがコツです。ゴシゴシすり込む必要はありません。
自己判断で使い続けない
数日塗っても全く良くならない、あるいは逆に数が増えたり痛みが強くなったりした場合は、すぐに使用を中止し、再受診してください。
まとめ
口内炎の軟膏は、適切な症状に対して正しく使用すれば、早期回復を助けてくれる心強いお薬です。しかし、根本的な原因(尖った歯や全身の不調など)が隠れている場合や、感染症のリスクがある場合もあります。お口の中で気になる症状があれば、自己判断で市販薬を使い続けず、まずは当クリニックにご相談ください。
【参考文献】
本コラムの内容は、以下の学術論文およびシステマティックレビューの報告に基づいています。
1.Al-Aizari NA, et al. (2026). Evidence-based recommendations for the treatment of recurrent aphthous stomatitis: insights from an umbrella review. Taylor & Francis.
2.Kong X, et al. (2026). Advances in the treatment of recurrent aphthous stomatitis: from synthetic and natural drugs to novel drug delivery systems. Frontiers in Pharmacology.
3.Liu H, et al. (2022). Efficacy of Topical Intervention for Recurrent Aphthous Stomatitis: A Network Meta-Analysis. Medicina.
瀬谷アクロスデンタルクリニック
〒246-0031 神奈川県横浜市瀬谷区瀬谷4-23-35 アクロスキューブ瀬谷1-1
TEL:045-489-7400