2025年10月20日
お子さんの歯が生え始めると、「虫歯予防」について意識される親御さんは多いことでしょう。歯磨きやフッ素塗布、甘いものの制限など、一般的な予防法はもちろん大切です。
しかし、当院が最も大切だとお伝えしたいのは「お子さんの虫歯は、ほとんどの場合、親御さんからうつる」という事実です。
このコラムでは、この感染ルートを断ち切ることで、お子さんの虫歯リスクを最小限にするための、最も効果的で根本的な予防法についてお話しします。
「うつる」メカニズムを知る:食器の共有よりも重要なこと
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には、虫歯の原因菌である「ミュータンス菌」は存在しません。この菌は、主に唾液を介して、ご家族、特に日常的に接する機会の多い親御さんから感染することが分かっています。
【具体的な感染経路】
・食べ物の「口移し」や「噛み与え」
・熱いものを冷ますために「フーフー」と息を吹きかける
・スプーンやコップなどの食器の共有
・口元へのキスなどのスキンシップ
・【特に重要】会話によるエアロゾル感染
新型コロナウイルス感染症の流行で認知度が上がったエアロゾル(目に見えない微粒子)は、会話やくしゃみ、咳などで飛び散ります。親御さんがお子さんの顔の至近距離で話しかけたり、笑ったりする行為は、唾液に含まれるミュータンス菌をエアロゾルとしてお子さんに届けてしまう、頻度として最も高い感染経路の一つと考えられます。
よく「食器の共有を避けるべき」と言われますが、近年の研究では、食器の共有以前から親子のスキンシップなどを通じて細菌の伝播は起こっていることが示されています。
ここで、予防の「鍵」が見えてきます。
お子さんに虫歯菌が「うつる」のを完全に防ぐことは困難です。しかし、「うつる菌の数を圧倒的に少なくしておくこと」は可能です。
独自の予防法:「親の口腔内コントロール」が最大の予防
当院が最も推奨する予防法は、「親御さん自身の口腔内から、虫歯菌の数を徹底的に減らすこと」です。
これは、「食器を別にする」といった感染ルートを一時的に断つ対処法よりも、はるかに根本的で効果的な方法です。日常的なエアロゾル感染のリスクを考えても、親御さんのお口の中の菌数を減らすことこそが、最も現実的で効果の高い予防策となります。
実際に、親御さんのお口の中の虫歯菌の数が少ないほど、お子さんへの感染率が著しく低くなるという研究結果も報告されています。
親御さんがご自身の虫歯や歯周病をしっかり治療し、歯科医院での定期的な専門的クリーニング(メンテナンス)によって口腔内の細菌数をコントロールすることは、以下のような「一石三鳥」の効果を生み出します。
メリット (1) お子さんへの感染リスクを最小化する
親御さんの唾液中の菌数が少なければ、たとえエアロゾルやスキンシップがあっても、お子さんの虫歯リスクは大きく下がります。
メリット (2) 親御さん自身の健康を守る
虫歯菌を減らし、口腔衛生状態を良好に保つことは、親御さんご自身の虫歯・歯周病予防に直結します。
メリット (3) お子さんの「予防意識」を育む
セルフケアを徹底し、定期的に歯科医院に通う親御さんの姿を「見て育つ」お子さんは、自然と同じように予防行動をとる大人に育ちやすいことが分かっています。生涯にわたってご自身の歯を守る、最も強力な「習慣」をプレゼントすることになるのです。
まずは親御さんから、歯科医院へ
お子さんの虫歯予防の第一歩は、お子さん自身のお口のケアだけでなく、親御さんご自身の口腔内の状態を把握し、ケアすることから始まります。
「最近、自分の歯のことは後回しになっていた」という親御さんも、ぜひこの機会にお子さんと一緒にご来院ください。親御さんの口腔内を健康に保つことが、お子さんの将来の歯の健康につながる、最も効果的な「愛の予防策」なのです。
当院では、ご家族皆様の健康をサポートするための最適な予防プランをご提案いたします。