2025年11月29日

「お口の健康」が「腎臓」と「透析予防」のカギを握る可能性
「むし歯の治療」が腎臓の病気の予防につながる、と言われたら驚かれるでしょうか?
近年、指定難病であるIgA腎症(アイジーエーじんしょう)の重症化に、特定の口腔細菌が深く関わっている可能性について、衝撃的な研究結果が発表され、医科と歯科の連携に熱い期待が寄せられています 。
放置できない IgA腎症のリアル
IgA腎症は、唾液などにも含まれる「IgA」というタンパク質(抗体)の免疫物質により腎臓(糸球体)に炎症が起きる病気です 。主な症状は「血尿」や「タンパク尿」ですが、多くは初期に自覚症状がないため、健診などで見つかるケースが多いです 。
約20年間の経過で、患者さんの30〜40%が末期腎不全となり、透析治療が必要になると推計されています 。血液透析には月約40万円、年間約500万円もの医療費がかかり、患者さんの日常生活の質(QOL)にも深刻な影響を与えます 。
むし歯菌「Cnm陽性ミュータンス菌」の関与が示唆された
IgA腎症の根本的な治療法はまだ確立されていません 。
そのような中、腎臓内科医である三崎太郎先生(聖隷浜松病院 腎センター長、腎臓内科部長)は、IgA腎症患者さんの多くに重度のむし歯があり、さらに特定のむし歯菌が病態に関連している可能性について、臨床と基礎研究を融合した取り組みを進めています
・臨床上の気づき: 血尿やタンパク量の多いIgA腎症の患者さんの多くで、口腔内がむし歯だらけの状態が認められ、ある患者さんで歯科治療を行ったところ尿タンパク量が減少したことが、研究のきっかけとなりました 。
・IgA腎症患者の特徴: 共同研究の結果、IgA腎症患者は、健康な人に比べて、特定のむし歯菌(Cnm陽性ミュータンス菌)の陽性率が高く(健常群11.5%に対しIgA腎症群27.5%)、タンパク尿も多いことが明らかになっています 。
・病気の発症との関連: この菌の持つ「Cnmタンパク」が、IgA腎症発症に関連している可能性を示す論文も発表されています 。また、動物モデルの研究では、この菌がIgA腎症様の腎炎を引き起こすことが証明できています 。
これらの研究から、口腔細菌が扁桃などを介して全身に影響を及ぼし、腎臓病を悪化させている可能性が示唆されたのです 。
医科歯科連携の推進と口腔ケアの可能性
だからこそ、三崎太郎先生ら専門家は「口腔内をキレイにする」というアプローチに大きな可能性を見出しています 。もし、定期的な歯科受診や口腔ケアで、慢性腎臓病の重症化や透析患者を減らすことができれば、全身の健康のみならず、医療費の削減にも大きく貢献できると期待されています 。
【患者さんが得られるメリット】
・健康寿命の延伸: 口腔疾患を内科疾患の原因の一つとして捉えることで、健康な生活を長く続けられる可能性が高まります。
・腎臓の保護: 適切な口腔ケアにより、腎臓の状態が改善する可能性が示唆されています。
三崎先生は、IgA腎症の患者さんに対して、口腔状態を良好に保つために歯科医院を受診することを強く勧めています 。
【まとめ】腎臓の健康を守る鍵は「お口の管理」にあり!
IgA腎症の重症化予防における口腔ケアの重要性は、最新の研究によって示唆されています 。瀬谷アクロスデンタルクリニックでは、この「医科と歯科の連携」の重要性を深く理解しており 、口腔内の細菌をコントロールすることが、全身の健康、特に腎臓の保護につながるという考えに基づき 、以下の取り組みを強くお勧めしています。
1.定期的な歯科検診とクリーニング: 歯周病やむし歯といった感染源を放置せず、細菌の温床をなくしましょう 。
2.プロフェッショナルな口腔ケア: 患者さん一人ひとりに合わせたセルフケア指導と、専門的なクリーニング(PMTCなど)を実施します
これからの歯科医療は、単に「生活を支える医療」から「生活を支え、命も守る医療」へと進化していく可能性を秘めているのです 。
当クリニックは歯科医療で横浜市瀬谷区での地域医療の一助を担う事を目指していきます。
腎臓の健康を守るためにも、ぜひこの機会に「お口の健康管理」について考えてみてはいかがでしょうか。
【引用・参考文献】
Misaki T. Naka S. Hatakeyama R. Fukunaga A. Nomura R. Isozaki T. Nakano K. Presence of Streptococcus mutans strains harbouring the cnm gene correlates with dental caries status and IgA nephropathy conditions. Sci Rep. 2016 Nov 4;6:36455.
Naka S, Matsuoka D. Misaki T. Nagasawa Y. Ito S. Nomura R. Nakano K. Matsumoto Nakano M. Contribution of collagen-binding protein Cnm of Streptococcus mutans to induced IgA nephropathy-like nephritis in rats. Commun Biol. 2024 Sep 14;7(1):1141.
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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