
インプラント
インプラント
歯を失った際の治療は、入れ歯(義歯)やブリッジが一般的でしたが、世界的には1960年代から第3の治療法としてインプラントが普及しています。
インプラントは、チタン製の人工歯根を顎(あご)の骨に埋め込み、その土台の上に人工歯を形成することで、天然歯のような噛み心地と見た目を実現できます。部分入れ歯やブリッジとは異なり、健常な両隣の歯を削ることなく残存率も高い治療法です。
インプラントは、他の治療法に比べて安定感や使い心地が良いとされています。その秘密は「支えの強度」にあります。人間の噛む力は、強く噛みしめたときには、50~60キロもの力がかかるといわれています。根っこ部分が顎骨に支持されている天然歯は、その力に耐えうるようにできているわけです。インプラントはその天然歯と同じ構造で、硬いものを食べたときの違和感や痛みに悩まされることはありません。まずは、お気軽にご相談ください。
歯を抜いてインプラントにするという選択は、失ってしまった歯の機能を取り戻し、見た目を改善するための非常に有効な治療法の一つです。しかし、インプラント治療には、タイミングや事前の準備がとても大切になってきます。
まずは、インプラント治療のタイミングについて、例え話でご説明させてください。
良い作物を育てるには、畑の土壌がとても重要です。
お口の中も、この畑と同じです。
インプラントは、顎の骨に人工の歯の根を埋め込む治療です。抜歯が必要な歯があったとしても、適切なタイミングで抜歯し、インプラント治療へと進むことができれば、顎の骨の状態が良いままスムーズに治療を進められることが多いです。
しかし、長期間にわたってグラグラの歯を無理に残したり、抜くべき歯を放置したりすると、その周囲の顎の骨が細菌感染や炎症によって溶けてしまい、やせ細ってしまうことがあります。例え話の「荒れ果てた畑」のように、骨の状態が悪化してしまうと、そのままではインプラントを安全に埋め込むことが難しくなります。その場合、インプラント手術の前に、「骨を増やすための外科手術(骨造成や再生療法)」が必要になることがあります。これは、患者様の体への負担が増えるだけでなく、治療期間が長くなり、費用も追加でかかってしまう可能性があります。
また、長年抜歯に踏み切れず歯がない状態が続くと、周囲の歯が動いてきたり、噛み合わせのバランスが崩れてきたりすることがあります。そうなると、インプラントを入れる位置を決めるのが難しくなり、治療全体の複雑さが増すことも考えられます。
抜歯のタイミングが適切で、顎の骨の状態が良い場合、インプラント治療は比較的シンプルに進めることができます。このようなケースでは高い治療成功率を期待できます。
一方で、抜歯のタイミングを逃し、顎の骨の状態が悪化してしまったり、噛み合わせのバランスが大きく崩れてしまったりした場合は、インプラント治療の難易度が非常に高くなります。そのような複雑なケースでは、一般的な歯科医院では対応が難しく、より高度な技術と豊富な経験を持つ歯科医師でなければ治療が困難になることがあります。結果として、受けられる医療機関が限られたり、希望する時期に治療が受けられなかったりする可能性も出てきます。
※当院ではインプラント専門医との連携があります。
難症例の場合には専門医を招聘しインプラント手術を行うことも可能です。
インプラント治療は、保険適用外の自由診療となるため、費用は比較的高額になります。治療費は、患者様の余命の長さに関わらず一括で設定されるため、もしその後の寿命が短かった場合、1年あたりの費用が高くなってしまうという考え方もできます。また、現在の経済状況を鑑みると、インプラントの価格は残念ながら上昇傾向にあることも事実です。
これらの点も踏まえ、当院では患者様一人ひとりの状況に合わせて、最適な治療計画をご提案したいと考えています。インプラント治療のメリット・デメリット、そして費用について、もしご不明な点があれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。
インプラント治療を行うにはいくつかの条件があります。まず、土台となる歯槽骨が健康であることです。顎骨が足りない場合は、骨を補う「骨造成」が必要になります。それには、骨移植法、骨再生誘導法、上顎洞底挙上法などがあります。顎骨の形態や硬さ、神経との位置関係や歯周病の進行程度なども評価する必要があります。
また、インプラントは外科手術ですから全身の健康状態が良好である必要があり、持病(心疾患、糖尿病など)がある場合、施術が難しいことがあります。顎が完全に成長していない成長発育中の子どもも適していません。
術後、歯科での定期的なメンテナンスと毎日の丁寧なブラッシングも大切です。これらをきちんと行わないと歯周病に似たインプラント周囲炎を起こし、土台の骨が侵され支えられなくなることもあります。
インプラントは基本的に3つのパーツからできています。土台となるのが歯槽骨に埋め込むインプラント体と呼ばれる人工歯根です。材質はチタンあるいはチタン合金で、様々な長さや太さがあり、骨量や埋める位置によって選択します。その上に上部構造と呼ばれる人工の歯をかぶせます。材質はレジン(プラスチック)、セラミック(陶器)、セラミックとレジンを混ぜ合わせたハイブリッドセラミック、金合金などがあり、強度や色調に違いがあります。人工歯根と上部構造の間にはアバットメントという部分があり、2つを連結するとともに人工歯根を守る役割を担います。材質はチタン、チタン合金、ジルコニアなどです。
形状はスクリュー(ネジ状)タイプとシリンダー(円筒形)タイプがありますが、スクリュータイプのほうが初期固定(インプラント体が骨によって固定されること)が得られやすいことや、噛む力を周囲の骨に分散できることから広く採用されています。シリンダータイプは前歯などの高い審美性を要求される部分に採用されることがあります。
検査とカウンセリング
まずは、レントゲンや歯科用CTを使って、お口の状態を正確に把握することから始まります。CT検査ではスキャンしたお口の中のデータを3D化し、コンピューター上で、埋入する部位の骨の状態(質、厚み、高さ)や血管の位置などを確認し、手術のシミュレーションを行います。この検査結果に基づいて最適な治療計画を立案します。内容はカウンセリングで丁寧に説明いたします。カウンセリングでは治療へのご希望やご不安などもうかがいますので、遠慮なくお話しください。
術前クリーニング
インプラントを埋め込む前に、感染症を起こすことがないようお口の中を清掃し、菌の数を減らしていきます。
インプラント手術
術式は手術を1回だけ行う1回法と、2回に分けて行う2回法があります。
手術ではもちろん麻酔を使用するため、痛みを感じることはありません。
1回法
インプラント体を埋める部位の粘膜を切開し、骨を露出させて専用ドリルで穴を開けます。そこにワンピースインプラントを埋め込みますが、ツーピースインプラントの場合には、インプラント体を埋め込み、同時にアバットメントを連結します。
2回法
インプラント体を埋め込む工程は1回法と同様ですが、インプラントはアバットメントが分かれているツーピースインプラントを使用します。インプラント体を埋め込んだ後、上部の穴にカバーを装着し、切開部を縫合して1次手術は終了です。
1次手術から数カ月経ったら(上顎は5カ月前後、下顎は3カ月前後が目安)2次手術を行います。2次手術はカバーの上の粘膜を切開し、カバーを除去して仮のヒーリングアバットメントを連結します。粘膜が治癒したら(2~3週間が目安)本物のアバットメントを連結して終了です。
人工歯の作成と装着
2次手術を終え、歯肉の状態が安定したら、型取りを行って仮歯を作製します。この際、かみ合わせや舌の違和感、頬を噛むなどの不具合がないかを確認し、調整します。最終的に完成した人工歯をアバットメントに装着して治療は終了です。
インプラントはメンテナンスが重要です
インプラントを長持ちさせるには日常の手入れと観察(メンテナンス)が大切です。清掃は歯科衛生士が専用歯ブラシなどを使用して指導します。また、定期的にかみ合わせの確認やレントゲン撮影をしてインプラント体の周囲骨の吸収状態などを診査します。装着後1カ月、3カ月、6カ月、1年と1年以内は短い間隔の期間で行い、1年以降は問題がなければ年1回のメンテナンスを行います。
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