2026年8月05日
皆さんは「内臓」と聞いて、どの器官を思い浮かべるでしょうか。胃や腸、肝臓、心臓など、身体の奥深くにあり、普段は決して直接見て触れることができないものを想像する方が多いと思います。
胃が疲れているからといって直接ブラシでこすって洗うことはできませんし、血管の中を自分で掃除することも不可能です。内臓のケアは、食事や運動、あるいは薬など「間接的」な方法に頼るしかありません。
しかし、私たちの身体には一つだけ例外があります。それが「お口(口腔)」です。
口腔は「露出した消化器」である
解剖学的・発生学的に見ると、お口は食道から胃、小腸、大腸へと続く一本のチューブである「消化管」の入り口にあたります。お口の中の粘膜は、そのまま胃や腸の粘膜へとひと続きに繋がっています。
つまり、歯や歯茎を含む口腔組織は「私たちが直接目で見て、手で触れることができる唯一の内臓(消化器)」なのです。
「歯周医学(Periodontal Medicine)」が示す全身への影響
近年、歯科・医学界において「歯周医学(ペリオドンタルメディシン)」という分野が確立されています。これは、お口の中の細菌(特に歯周病菌)が、全身の臓器や疾患にどのような影響を与えるかを研究する学問です。
米国歯周病学会(AAP)と欧州歯周病学会(EFP)をはじめとする国際的な学術機関は、歯周病が単なる口内の病気にとどまらず、全身の健康に悪影響を及ぼすという強力なエビデンス(科学的根拠)を提示しています。
具体的には、歯周ポケットの中で増殖した細菌が毛細血管から血流に乗って全身を巡り、糖尿病の悪化、心疾患や脳卒中、誤嚥性肺炎などのリスクを上昇させることが数多くの医学論文で証明されています。
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お口の中が不衛生な状態であるということは、「入り口で発生した毒素や細菌を、24時間休むことなく他の内臓へ送り込み続けている状態」と言っても過言ではありません。
近年、がんなどの大きな手術の前に「必ず歯科を受診して、お口のケアをしてください」と病院の医師から指示されるケースが増えています。これもまさに、「露出した内臓(お口)を綺麗にしておかないと、手術後の回復に悪影響を及ぼしたり、肺炎などの合併症を引き起こす危険がある」ということを、医療界全体が強く認識しているからです。
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毎日の歯磨きは「内臓のメンテナンス」
他の内臓を直接洗うことはできませんが、お口の中だけは違います。
「露出した内臓」である歯と歯茎は、歯ブラシや歯間ブラシ、フロスを使うことで、ご自身の手で直接細菌の塊(プラーク)を取り除き、清潔に保つことができます。
毎日のオーラルケアは、単に「虫歯を防ぐ」「息をきれいにする」ためだけのものではありません。ご自身で直接行える、最も効果的で身近な「全身の内臓を守るための予防医療」なのです。

瀬谷アクロスデンタルクリニックの取り組み
当クリニックでは、エビデンス(科学的根拠)に基づいた予防歯科に力を入れています。
ご自宅での毎日のセルフケア(内臓のセルフメンテナンス)の質を高めるためのブラッシング指導はもちろん、ご自身では落としきれないバイオフィルムや歯石を、専門的な器具を用いて徹底的に除去するプロフェッショナルケアを提供しています。
「歯や歯茎は大切な内臓の一部である」。
ぜひこの視点を持っていただき、全身の健康を守るための口腔ケアを、私たちと一緒に二人三脚で進めていきましょう。お口の健康について気になることがありましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
【参考文献・エビデンス】
本コラムの内容は、以下の学術的見解および医学的ガイドラインに基づいています。
1.米国歯周病学会(AAP)および欧州歯周病学会(EFP)合同ワークショップ コンセンサスレポート
Sanz M, et al. “Periodontitis and cardiovascular diseases: Consensus report.” Journal of Clinical Periodontology (2020)
(※歯周病と心血管疾患などの全身疾患との関連性について、世界の歯周病学を牽引する両学会が科学的根拠を取りまとめた公式報告です)
2.日本歯周病学会・日本糖尿病学会 編『糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン』
(※歯周病を治療し口腔内を清潔に保つことが、糖尿病の血糖コントロール改善に有効であることが医学的に明記されています)
3.Offenbacher, S. “Periodontal Medicine”
Annals of Periodontology (1996)
(※「歯周医学(ペリオドンタルメディシン)」という、お口の感染症が全身の健康に影響を与えるという概念を提唱し、現代の予防歯科の基礎となった重要な論文です)
4.厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」
(※国としても、口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防や全身疾患のリスク低減に直結するというデータを広く啓発しています)
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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