2026年9月18日
「子どもや若者の虫歯・歯の怪我で、根の治療(根管治療)が必要と言われた」 そう聞いて、不安に思われるご家族の方は少なくありません。
根管治療は大人にとっても複雑で精度の求められる治療ですが、成長過程にある若い世代の歯には、大人とはまた異なる「若年者特有の難しさ」が存在します。
今回は、若年者の根管治療における構造上の特徴と、当院での治療アプローチについて分かりやすく解説します。
若年者の「根管(歯の根の管)」に見られる2つの特徴
歯の内部にある神経や血管が通る管を「根管(こんかん)」、その最先端部分を「根尖(こんせん)」と呼びます。
大人の根管治療は「細く複雑に曲がりくねった管をいかに清掃するか」が難しさの中心になりますが、成長途中の若い歯には以下のような特有の難点があります。
根管が太く、歯の壁自体が薄い
大人の歯は加齢とともに内部が狭くなっていきますが、若い歯の根管は非常に太く、周囲の歯の壁(象牙質)も薄くてデリケートです。
治療上の課題: 消毒や清掃を行う器具がぴったり適合しにくいため、効率よく汚れを取り除く工夫が必要です。また、壁が薄いため、歯を削りすぎたり傷つけたりしないよう、極めて繊細な器具操作が求められます。
根尖(根の先)が未完成で開いている
永久歯が生えてから根の先が完全に完成するまでには、およそ3〜5年ほどの時間がかかります。そのため、若年者の歯は根の先(根尖)がラッパ状に開いたままの状態(根尖未完成歯)であることが少なくありません。
治療上の課題: 通常の根管治療では、根の先端をしっかり密閉(根管充填)して細菌の再侵入を防ぎます。しかし、根の先が開いていると、薬が先端から骨の方へ漏れ出てしまったり、ぴったりと蓋をすることが構造上非常に困難になります。
成長段階に合わせた特別な治療アプローチ
若年者の根管治療では、単に神経を取って薬を詰めるだけでなく、「いかに根の成長を止めずに治療を進めるか」「未完成な根の先をどうやって安全に閉鎖するか」という高度な判断が必要となります。
歯髄温存療法(アペキソゲネシス)
神経の炎症が一部にとどまっている場合、可能な限り健全な神経を残し、歯の根が自然に成長して閉じるのを促します。
根尖形成術(アペキシフィケーション)とMTAセメント
どうしても神経を取らざるを得ない場合でも、特殊なバイオセラミック材料(MTAセメントなど)を用いて根の先を人工的かつ安全に封鎖し、しっかりと密閉する治療を行います。
早期発見と適切な処置が、将来の歯の寿命を左右します
若い時期に根管治療が必要になる主な原因は、進行した虫歯やスポーツ・転倒などによる歯の破折・打撲です。
若い歯はトラブルの進行が早い反面、組織の再生能力が高いため、適切な処置を行えば根の成長を助け、将来にわたって自分の歯を残せる可能性が十分にあります。「少ししみる」「歯を強くぶつけた」といった段階で早めにご相談いただくことが、重症化を防ぐ第一歩です。
当クリニックでは、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や拡大鏡を活用し、若年者特有の繊細な根管構造に対しても精密で丁寧な治療が可能です。
お子さまやご自身の歯のことで気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
【参考文献・関連ガイドライン】
1.日本歯内療法学会 編: 『歯内治療学 第5版』, 医歯薬出版, 2021.
2.日本小児歯科学会 編: 『小児歯科学 第6版』, 医歯薬出版, 2020.
3.American Association of Endodontists (AAE): Endodontic Diagnosis and Treatment Planning for the Pediatric and Adolescent Patient, AAE Clinical Guidelines.
4.Torabinejad, M., et al.: Mineral Trioxide Aggregate: A Comprehensive Review of Physical Properties and Clinical Applications, Journal of Endodontics, 2010.
5.Andreasen, J. O., et al.: Traumatic Dental Injuries: A Manual (3rd Edition), Wiley-Blackwell, 2011.
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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