2026年7月17日
日々の診療の中で、親御さんから非常によくいただくご質問があります。 「先生、うちの子って他の子と比べて虫歯が多い方ですか?」
実はこの質問、現代の小児歯科が抱える非常に重要なテーマを突いています。
本日は、客観的なデータと私の臨床での実感も交えながら、現代の子どもたちの「虫歯事情」と、当院が目指す「守り、育てる」歯科医療についてお話ししたいと思います。
中央値は「0本」。虫歯ゼロが当たり前の時代
横浜市の公式資料(令和3年度実績)によると、12歳児で「むし歯のない子(カリエスフリー)」の割合は68.7%に上ります。全体の約7割のお子さんが虫歯ゼロであるため、データを少ない順に並べた際の中央に位置する値(中央値)や、最も頻繁に現れる値(最頻値)は必然的に「0本」となります。
親御さん世代の感覚からすると驚くかもしれませんが、今や「虫歯が1本もない子」が大多数を占める時代になっています。
虫歯は激減。しかし「二極化」している現実
しかし、横浜市の12歳児の平均むし歯数は「0.48本」です。中央値が0本なのになぜ平均値が引き上げられるのでしょうか。ここにあるのが、現代の小児歯科保健の大きな特徴であり、私が日々の診療で痛感している「う蝕(虫歯)の二極化」です。

全体の平均値0.48本は、むし歯を保有する一部のお子さんによって引き上げられています。割合から逆算すると、むし歯の分布構造は以下のようになります。
・約70%の児童: むし歯 0本
・約30%の児童: むし歯 あり
この「むし歯がある約30%の児童」だけで計算した場合、その集団内での一人平均むし歯数は約1.5本(0.48 ÷ 0.313)に跳ね上がります。
さらに詳細な分布を推計すると、以下のような実態が見えてきます。
【むし歯ゼロ】約70%
予防習慣が定着している層
【むし歯1〜2本】約20〜25%
軽度のう蝕にとどまる層
【齲蝕多発(3本以上)】約5%前後
う蝕が極端に集中しているハイリスク層
平均値の「0.48本」という数字だけを見ると集団全体が均等に健康であるように見えますが、実際にはこの数%の「むし歯多発傾向」にあるお子さんにう蝕が偏在しているのが実態です。おやつの与え方、口呼吸(お口ぽかん)の有無、日々のケアの習慣など、生活環境の少しの差が、お口の中の明暗をくっきりと分けてしまっているのです。
予防歯科のエビデンスと当クリニックのスタンス
だからこそ、「うちの子はどうだろう?」と気になった時が、リスクを断ち切る一番のタイミングです。もし虫歯が見つかった場合、ただ削って埋めるだけではなく、「なぜその子に虫歯が集中してしまったのか」を根本から考え、環境をリセットする必要があります。
当クリニックが、治療以上に「予防歯科」を強く推奨している理由はここにあります。
スウェーデンのペール・アクセルソン博士による世界的に有名な長期臨床研究が証明しているように、徹底したプラークコントロールと歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアを継続すれば、生涯にわたって歯を失うリスクを極限まで減らすことが可能です。
学術的なエビデンスに基づき、「いかにして虫歯を作らせないか」を患者さんと一緒に計画していくことこそが、現代の歯科医療のスタンダードです。
虫歯の「予防」から、顎の発育を促す「育成」へ
そして、虫歯予防と同じくらい現在重要になっているのが、「歯並び」や「お口の機能発達」のサポートです。正しい顎の発育を促し、正常な噛み合わせを獲得することは、口呼吸を防ぎ、将来の虫歯や歯周病リスクを根本から下げることに直結します。
そこで当クリニックでは、この「お口の機能の育成」という観点から、2026年6月末より新しい小児予防矯正プログラム「NeO-Cap.System®(ネオキャップシステム)」の導入を開始いたします。
これは、夜間の装置装着をメインとし、子ども自身の自然な咀嚼力と成長の力を最大限に引き出しながら、無理なく顎を広げて正しい歯並びへと導くシステムです。歯を抜かず、子どもへの負担も少ない状態で、生涯にわたるお口の健康の土台を作ることができます。
結びに
「他の子と比べてどうか」という視点も大切ですが、最も重要なのは「その子自身の将来のお口の健康をどう守り、育てていくか」です。
環境を整えれば、「虫歯ゼロ」は当たり前にできる時代です。
私たち瀬谷アクロスデンタルクリニックは、エビデンスに基づいた確かな予防管理プログラムと最新の小児矯正で、大切なお子様の健やかな成長を全力でサポートいたします。
ご不安なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。まずは定期検診でお待ちしております。
【参考文献・出典】
1.横浜市 医療局「令和元年度・令和3年度 乳幼児歯科健康診査等におけるむし歯(う蝕)の状況 および 学校保健統計調査」
2.Axelsson P, Nyström B, Lindhe J. “The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults: Results after 30 years of maintenance.” Journal of Clinical Periodontology, 31(9), 749-757, 2004.
3.一般社団法人 国際予防矯正協会「NeO-Cap.System®(ネオキャップシステム)」臨床資料
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