2026年9月07日

先日、夜勤のお仕事をされている患者様と「睡眠」についてお話しする機会がありました。実は私も以前、ホテルで不規則なシフト勤務をしていた経験があり、日中に質の高い睡眠をとる難しさはとてもよく分かります。
朝起きた時に「顎がだるい」「歯が浮くような感じがする」といった症状はありませんか?それは寝ている間に行っている「歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)」が原因かもしれません。 そして最新の歯科・睡眠医学の研究で、歯ぎしりには「睡眠ホルモン(メラトニン)」が深く関わっていることが分かってきました。
メラトニン不足が歯ぎしりを引き起こす?
メラトニンは、私たちが深い眠りにつくために脳から分泌されるホルモンです。最近の研究で、「歯ぎしりをする人は、夜間のメラトニン濃度が低い」というデータが報告されています。
夜勤などで昼夜逆転の生活が続くと、メラトニンの分泌リズムが乱れます。メラトニンが不足して睡眠が浅くなると、自律神経が不安定になり、その微小な覚醒が引き金となって顎の筋肉が異常に動き、歯ぎしりが発生してしまうのです。

日中でもメラトニンを分泌させる「医学的アプローチ」
では、夜勤の方はどうすればよいのでしょうか。睡眠医学の分野では、「光をコントロールして、脳に夜だと錯覚させる」というアプローチが研究・推奨されています。メラトニンは、目から入る光(特にブルーライト)が遮断されることで分泌が高まる性質があるからです。
退勤時の「サングラス」が効果的
夜勤明けの朝、明るい太陽光を浴びてしまうとメラトニンの分泌が止まってしまいます。帰宅時はサングラスを着用して目に入る光を遮断し、帰宅後も遮光カーテンで寝室を「完全な暗闇」にすることで、日中であってもメラトニンの分泌を促すことができます。
ハードタイプのナイトガード(マウスピース)の活用
睡眠環境の工夫と並行して、当クリニックで強く推奨しているのが専用のナイトガードの装着です。当院では、歯ぎしりの強い力からしっかりと歯と顎関節を保護するために、耐久性の高いハードタイプのナイトガードを処方しています。 ナイトガード自体は歯ぎしりそのものを「止める」ものではありませんが、交通事故のダメージを減らす「シートベルトやエアバッグ」のように、大切な歯が削れたり割れたりするのを防ぐ重要な役割を持っています。
ナイトガードのさらに詳しい役割や、当院がソフトタイプではなくハードタイプを採用している医学的な理由については、以下のコラムで詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
▶︎ 夜間の歯ぎしりから歯を守る!「ナイトガード」の本当の役割とは?
おわりに
「たかが歯ぎしり」と放置してしまうと、大切な歯が割れてしまったり、顎関節症の原因になるだけでなく、歯周病を急速に悪化させて最終的に歯を失う原因にも繋がります。
睡眠中の食いしばりや歯ぎしりが、歯や歯周組織にどれほど恐ろしいダメージを与えるかについては、こちらのコラムでも詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
▶︎ その「ギリギリ」「ギュッ」が歯を奪う!?歯周病を急加速させる悪習慣
お仕事などで睡眠リズムを整えるのが難しい方こそ、光のコントロールとお口のケアによるダブルの対策が必要です。朝の顎の疲れや歯のダメージが気になる方は、手遅れになる前にぜひお気軽に当クリニックまでご相談ください。
【参考文献】
1.Kato T, et al. “Neurobiological mechanisms involved in sleep bruxism.” Critical Reviews in Oral Biology & Medicine (2003)
2.Miyawaki S, et al. “Association between sleep bruxism and sleep respiratory events in patients with obstructive sleep apnea syndrome.” (睡眠の質と微小覚醒に関する知見)
3.日本睡眠学会 編 「睡眠学」 (時間生物学・シフトワークにおけるメラトニン分泌動態について)
4.一般社団法人 日本補綴歯科学会 編 「補綴歯科診療ガイドライン」
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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