2026年8月10日
歯科の診察中に気づくこともある「お顔の違和感」
歯科医院にお越しになる患者さんは、もちろん歯や口の中に症状がある方ばかりです。しかし、実はその症状が口腔内だけではない、全身のサインであることも少なくありません。当クリニックでは、単に「虫歯があるか」を見るだけでなく、患者さんの全身の状態を多角的に診察することを重視しています。
先日も、「冷たいものがキーンとしみる」という主訴で来院された患者さんがいらっしゃいました。しかし、詳しくお話を伺う中で、「最近、エラから顎にかけてのフェイスラインに、なんとなく突っ張るような痺れや違和感がある」「うがいの時に少し水が漏れそうになったり、特定の言葉が少し話しづらかったりする」という、お顔の症状も併せて打ち明けてくださいました。
聞けば、「以前にも体調を崩したときに似たような違和感があり、その時は自然に治ったので様子を見ていた」とのことでした。
「なぜそうなるのか」を追求する、当クリニックの臨床推論
これらの症状に対し、私たちは「歯がしみる」という歯科的なアプローチだけでなく、「このお顔の違和感は、どの神経の領域からきているのか?」「過去の体調の変化と関連はないか?」という多角的な視点から臨床推論を行いました。

【診察と推論のプロセス】
視診・触診による鑑別
お口の中を拝見したところ、歯茎や粘膜に明らかな腫れや異常は見られませんでした。また、鏡の前で「笑ってください」とお伝えした際もお顔の動きに大きな左右差(完全な麻痺)は認められませんでした。
重要な発見
しかし、顔面神経の走行ルートである下顎の縁(フェイスライン)に沿った領域を注意深く触診したところ、患者さんから「あ、その部分を押されるとズーンと響くような痛みや痺れがある」という明確な反応がありました。これは、顔面神経の枝(下顎縁枝)の走行エリアと正確に一致します。
ここで解剖学的な推論が繋がります。患者さんが感じていた「話しづらさ」や「うがいのしにくさ」は、舌の異常ではなく、口唇や頬の筋肉(顔面神経支配)のコントロールが軽度に低下したことによるものと考えられます。また、顎まわりの突っ張り感や痺れも、顔面神経の炎症が引き起こす関連痛や初期の感覚異常として説明がつきます。
これらの結果を総合的に分析し、私たちは「目立つ麻痺はまだ出ていないものの、顔面神経の炎症や疾患による『末梢性顔面神経疾患(顔面神経麻痺の初期症状など)』」の可能性を強く疑うに至りました。
表面的な治療ではなく根本原因の追究を優先
今回の神経症状は、原因によってはメチコバール(ビタミンB12製剤)のような神経の機能を助ける薬剤を処方することで、一時的に症状が軽快する可能性も考えられます。当クリニックでも、こうした神経症状への対応手段を知識として持ち合わせています。
しかし、顔面神経の疾患の中には、ステロイド治療を急ぐべきものや、より精密な画像診断(CT、MRIなど)が必要な重篤な原因が隠れているリスクもあります。
また一般的な歯科医院である当クリニックの設備だけでは、今回の臨床推論を裏付けるためのより精密な検査を行うことができません。更に、一見して似た症状を示す「別の疾患」である可能性も、完全には否定できないのが事実です。
私たちは、表面的な症状の改善に留まることなく、患者さんの根本原因を追究しないことによるリスクを重視しました。症状を一時的に抑える安易な治療に流されることなく、正確な診断こそが患者さんの未来を守ると判断したためです。
そのため、患者さんの安心と将来のリスク回避を最優先し、信頼できる大学病院の専門外来へ迅速にご紹介させていただきました。
瀬谷区の一般歯科であると同時に、全身の健康の入り口を守る存在として、私たちは患者さんの症状が口腔内だけにとどまらないと判断した場合、「最良の医療」を提供するために、速やかに適切な専門医への橋渡しをいたします。
「歯のトラブルではないけれど、顔や口元にいつもと違う違和感がある」という方も、ご自身の症状を軽く見ずに、ぜひ一度ご相談ください。
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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