治療したばかりの歯がしみる・痛いのはなぜ?〜最新の歯科学エビデンスに基づく、症状の見極めと神経を残すためのポイント〜|瀬谷駅近くの歯医者・歯科|瀬谷アクロスデンタルクリニック

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治療したばかりの歯がしみる・痛いのはなぜ?〜最新の歯科学エビデンスに基づく、症状の見極めと神経を残すためのポイント〜

治療したばかりの歯がしみる・痛いのはなぜ?〜最新の歯科学エビデンスに基づく、症状の見極めと神経を残すためのポイント〜|瀬谷駅近くの歯医者・歯科|瀬谷アクロスデンタルクリニック

2026年6月25日

こんにちは。日々の診療の中で、患者さんからよくこんなご相談を受けます。

「虫歯の治療をして詰め物をしたのに、まだ歯がしみる気がする…」 「治療が終わったはずの歯が痛むけれど、大丈夫?」

治療したばかりの歯に違和感があると、とても不安になりますよね。実は、治療後の歯がしみたり痛んだりすることには、歯の細胞や神経の生理学的なメカニズムが深く関わっています。

当クリニックでは、患者さんの大切な歯の神経をできる限り残すために、「EBD(科学的根拠に基づいた歯科医療)」を実践しています。今回は、世界的な歯科学のガイドラインや最新の研究データに基づき、少し様子を見ても良いケースと、早急な処置が必要なケースの違いを詳しく解説します。

なぜ治療後に歯がしみるの?(最新の研究で分かった「歯のセンサー」の働き)

虫歯(う蝕)の治療では、感染した部分を削り取り、CR(コンポジットレジン)などの詰め物をします。虫歯が深く神経に近かった場合、削った刺激などによって一時的に歯が過敏になります。

一昔前までは、このしみる痛みは「歯の中の水分が移動して、神経が直接引っ張られるため」と説明されていました。しかし最新の研究により、さらに精密なメカニズムが解明されています。

実は、歯の内部には「象牙芽細胞(ぞうげがさいぼう)」という特別な細胞が並んでいます。近年の分子生物学の研究により、この細胞そのものが温度の変化や水分の移動を感知する「高感度なセンサー」として働いていることが分かってきました。 治療直後の過敏な状態の時に冷たい刺激などが加わると、この象牙芽細胞のセンサーが反応し、隣接する神経へ「しみる!」というシグナル(神経伝達物質)を送ることで痛みを感じるのです。

経過を見て良い症状:「冷たいもの」で「瞬間的」にしみる

冷たい飲み物などを口にした時に瞬間的にしみる程度であれば、すぐに再治療をするのではなく、少し様子を見ていただくことをおすすめしています。

医学的な根拠(可逆性歯髄炎)

米国歯内療法学会(AAE)の診断基準をはじめとする多くの文献において、このような一過性の痛みは「可逆性歯髄炎(回復可能な神経の炎症)」と分類されます。原因となっている刺激から歯を保護できれば、正常な状態に戻る可能性が高い状態です。

修復象牙質(神経を守る壁)が作られる期間

口腔組織学的な研究データによると、刺激を受けた象牙芽細胞は、自らを守るために「修復象牙質(第二象牙質)」という新しいバリアを作り始めます。この壁は1日に約1〜2μm(マイクロメートル)という非常にゆっくりとしたスピードで形成されるため、十分な厚みを持った壁が完成してしみる症状が消えるまでには、数ヶ月の期間が必要であることが論文でも示されています。

早急な受診が必要な症状:「温かいもの」で痛む・「何もしなくても」痛い

一方で、以下のような症状が出ている場合は、神経の炎症が後戻りできない状態まで進んでしまっているサインの可能性があります。

温かいものを飲食した時に、ズキズキとした痛みが長く続く

何もしていないのに強い痛みがある(自発痛)

夜、寝ようとすると痛みが強くなる

医学的な根拠(不可逆性歯髄炎)

これらの症状は、歯科学的に「不可逆性歯髄炎(回復不可能な神経の炎症)」と診断されます。冷たい刺激に反応する表層のセンサーではなく、より歯の深部にあり、持続的な鈍痛や激痛を伝える神経(C線維)が強い炎症を起こしている状態です。
複数の臨床研究やガイドラインにおいても、温熱刺激による持続痛や自発痛がある場合、歯髄を保存できる(神経を残せる)確率は極めて低いと報告されています。
この場合は痛みを我慢せず、神経を取り除いて感染を防ぐ治療(抜髄処置)を早急に行う必要があります。

症状と診断のエビデンスまとめ

冷たいもので「一瞬」しみる場合

歯の内部で起きていること: 歯の細胞(象牙芽細胞のセンサー)が一時的に過敏になっている状態です(可逆性歯髄炎)。数ヶ月かけて「修復象牙質」が形成されることで回復が見込めます。

当クリニックでの推奨事項: 数週間~数ヶ月様子を見る(神経を残せる可能性が高いです)

温かいもので「持続的」に痛む・何もしなくても痛い(自発痛)場合

歯の内部で起きていること: 深部の神経まで強い炎症が波及している状態です(不可逆性歯髄炎)。放置すると神経が壊死し、根の先まで感染が広がるリスクがあります。

当クリニックでの推奨事項: 早急に受診する(神経の処置が必要な場合が多いです)

治療後にしみる症状が出ると不安になるかもしれませんが、それが「冷たいものへの一過性の痛み」であれば、あなたご自身の体が科学的データ通りに「神経を守るための壁」を一生懸命に作っている期間であることが多いのです。

とはいえ、ご自身で痛みの種類や原因を客観的に判断するのは大変難しいと思います。
「この痛みは様子を見ていて大丈夫かな?」と迷った時や、痛みが日に日に強くなっていると感じる時は、決してご無理をなさらず、いつでもお気軽に瀬谷アクロスデンタルクリニックへご相談ください。
正しい診断とエビデンスに基づき、最善の治療法をご提案いたします。

【参考文献】

1.AAE Consensus Conference Recommended Diagnostic Terminology. (2009)
米国歯内療法学会(AAE)が定める、可逆性・不可逆性歯髄炎などの国際的な診断基準。

2.Bernal, L., et al. “Odontoblast TRPC5 channels signal cold pain in teeth.” Science Advances (2021)
象牙芽細胞が「TRPC5」という温度センサーを持ち、冷たい刺激を感知して神経へ痛みのシグナルを伝達していることを解明した最新の研究論文。

3.Hargreaves, K. M., et al. “Cohen’s Pathways of the Pulp 12th Edition” Elsevier (2020)
世界的な歯内療法学の成書。修復象牙質の形成速度(1日約1〜2μm)や、歯髄の生理学的なメカニズムに関する記述を参照。

4.Brännström, M. “Sensitivity of dentine.” Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology (1966)
歯がしみる痛みの基本メカニズムである「動水力学説(Hydrodynamic theory)」を提唱した古典的かつ重要な論文。

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