2026年9月26日

こんにちは、瀬谷アクロスデンタルクリニックです。
「口内炎が痛くて授乳や食事がつらいけれど、薬の説明書を見たら『授乳を避けること』と書いてあって使うのをためらってしまう……」
このようなご相談をいただくことは少なくありません。産後や授乳期は、夜間の頻回授乳による睡眠不足やホルモンバランスの変化、栄養バランスの偏りなどが重なり、口内炎ができやすい時期です。
「ステロイド」という言葉や添付文書の注意書きに不安を感じる方へ向けて、なぜそう記載されているのか、実際の母乳への影響について専門機関がどのように評価しているのかを解説します。
添付文書に「授乳を避ける」と書かれている理由
市販薬や処方薬の添付文書(お薬の説明書)には、多くの場合「授乳中の使用は避けることが望ましい」あるいは「医師に相談すること」といった画一的な記載がされています。
これには主に2つの背景があります。
【倫理的な臨床試験の難しさ】
倫理的な観点から、製薬会社が意図的に授乳中のお母さんを対象とした大規模な治験を行うことは極めて困難です。
【予防的なリスク表記】
十分な治験データが存在しない場合、製薬会社は法的な観点からも慎重な注意喚起を記載する必要があります。
つまり、添付文書の記載は「危険性が証明されているから禁止している」のではなく、「臨床試験データが限られているため、念のため慎重な記載になっている」という側面が強いのが実態です。
実際の母乳移行リスクと専門機関の見解
実際の医療現場では、添付文書の表記に加えて、薬理学的なメカニズムや国内外の研究機関の知見をもとに安全性を総合的に評価します。

口内炎治療によく用いられるステロイド軟膏(トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾンなど)について、公的機関等では「通常量の局所使用であれば、赤ちゃんに影響する可能性は極めて低いと考えられる」と評価されています。その主な理由は以下の3点です。
【使用する主薬がごく微量であること】
1回あたりの使用量は米粒大(約0.1g)程度であり、そこに含まれるステロイド成分の総量はごくわずかです。
【血中濃度・母乳移行が極めて低いこと】
患部への局所塗布であるため、口腔粘膜や消化管から吸収されてお母さんの血液中に移行する量は非常に少なく、母乳中へ移行する量も臨床的に無視できるレベルにとどまると考えられています。
【内服薬との違い】
全身に作用させる飲み薬とは異なり、患部にピンポイントで作用させる軟膏剤は、赤ちゃんに副腎抑制などの影響を及ぼす可能性は極めて低いとされています。
より安心して使うための塗布のポイント
少しでも赤ちゃんの摂取リスクを減らし、薬の効果をしっかり得るための工夫は以下の3つです。
「授乳直後」に塗布する
授乳が終わった直後に塗ることで、次の授乳までに十分な時間が確保でき、薬が患部に定着・吸収されます。
水分を軽く拭き取ってから乗せる
清潔なティッシュ等で患部の唾液を軽く抑えてから軟膏を乗せると、しっかり密着して唾液で流れにくくなります。
薄く患部だけを覆う
すり込まず、口内炎の表面を薄くカバーするように置くだけで十分です。
痛みを我慢しすぎず、まずはご相談ください
口内炎の強い痛みを我慢しながらの育児は、お母さん自身の大きな心身の負担となってしまいます。
公的な指針でも、適切な使用量と短期間の使用であれば過度に心配する必要はないとされています。市販薬の表記で迷ったり、痛みが長引いてつらいときは、無理に我慢せず歯科医師までお気軽にご相談ください。
【あわせて読みたい関連記事】
▶口内炎のお薬(ステロイド軟膏)は治りを早くする?正しい効果と使い方
【参考文献・参考リンク】
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「授乳中のお薬Q&A」
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/qa_junyu.html
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「授乳中に安全に使用できると考えられる薬(薬効順)」
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_yakkou.html
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
各種ステロイド含有口腔用軟膏(トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン等)添付文書・インタビューフォーム
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