2026年9月29日

こんにちは、瀬谷アクロスデンタルクリニックです。
「赤ちゃんが母乳をうまく飲めない」
「授乳のたびに乳首に激痛が走る」
このようなお悩みはありませんか?
それはお母さんの努力不足や、赤ちゃんの飲み方が下手なわけではなく、「舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)」が原因かもしれません。本日は、授乳トラブルの隠れた原因である舌小帯短縮症について、最新の医学的エビデンスを交えて解説します。
舌小帯短縮症とは?
舌小帯とは、舌の裏側と口の底をつないでいる筋(ヒダ)のことです。
このヒダが生まれつき短かったり、舌の先端近くに付着していたりすることで、舌の動きが制限されてしまう状態を「舌小帯短縮症(英語名:Tongue-tie)」と呼びます。新生児の約4〜11%程度に見られるとされ、決して珍しい疾患ではありません。
【代表的なサイン:ハート舌】 赤ちゃんが泣いて口を大きく開けたときや、舌を前に出そうとしたときに、舌の先がヒダに引っ張られてくびれ、「ハート型」に見えるのが特徴的なサインです。ただし、見た目には分かりにくい「後方型(Posterior Tongue-tie)」と呼ばれるタイプも存在するため、舌の形だけで判断するのは困難です。
母子に現れる「SOS」のサイン
舌がうまく動かせないと、赤ちゃんは乳輪を深くくわえることができず、乳首の先だけを浅く吸ってしまいます。これにより、母子双方に以下のような症状が現れます。
赤ちゃんに見られる症状
・授乳中に「チュパチュパ」「カッカッ」と空気を飲むような音が鳴る
・母乳を吸い続ける体力がなく、すぐに外れてしまう、または授乳時間が異常に長い
・しっかり飲めていないため、体重の増えが悪い
お母さんに見られる症状
・授乳のたびに乳首に激痛が走る、切れて出血する
・授乳後の乳首が潰れて変形している(リップスティック型)
・赤ちゃんがしっかり飲み取れないため、乳腺炎を繰り返す
日本と海外で異なる「治療の常識」

健診などでこれらの悩みを相談しても、日本では「大きくなれば伸びるから様子を見ましょう」と言われることが少なくありません。これは、2001年に国内の学会が「手術の有効性は確立していない」という趣旨の見解を出した歴史的背景があり、現在もその考え方が一部に残っているためです。
しかし、現在の世界的な医療のスタンダードは「機能重視」の積極的治療にシフトしています。米国小児科学会(AAP)や米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNS)、国際母乳医学会(ABM)などの最新ガイドラインでは、「舌の形がどうか」ではなく「授乳に悪影響(母親の痛みや赤ちゃんの体重増加不良など)が出ているか」を重視し、問題があれば舌小帯を切開する治療が有効かつ安全であると明記されています。
瀬谷アクロスデンタルクリニックの診断・治療方針
当クリニックでは、単に「舌のヒダが短い」「ハート舌になっている」といった「見た目(形態)」だけで安易に処置を勧めることはありません。最新の世界的な医学基準に則り、お子様の成長段階(ライフステージ)に合わせた「機能障害の有無」を最も重要な指標として評価しています。
具体的には、以下のような基準で処置の必要性や緊急性を判断します。
【乳幼児期】摂食・哺乳障害の有無
お母さんの授乳時の激しい痛み、赤ちゃんの体重増加不良、うまく飲み込めない等の機能障害があるかどうかを評価します。
【幼児期〜学童期】構音障害(発音)の有無
言葉を話すようになってから、「ラ行・タ行・サ行」などが舌足らずで不明瞭になっていないか、お口の正しい成長(歯並びや呼吸)を妨げていないかを評価します。
当クリニックではお口の専門家として的確な評価・診断を行いますが、乳幼児への外科的処置には、より専門的で安全な全身管理の環境が求められます。そのため、当クリニックでの乳幼児に対する舌小帯切開術(手術)は行っておりません。診察の結果、治療や緊急性があると判断される場合には、速やかに適切な高次医療機関(専門の小児科や総合病院の歯科口腔外科など)への紹介状を作成いたします。
【参考:専門機関での一般的な治療】
月齢の低い赤ちゃんの場合、専門機関では少量の局所麻酔を用い、数秒〜数分で処置が行われることが一般的です。出血もごくわずかで、処置直後から授乳が可能なケースが多く、「今までの激痛が嘘のように消えた」と驚かれるお母さんも少なくありません。
おわりに
「毎回の授乳が辛い」と一人で悩む必要はありません。
様子を見ているうちに母乳育児を諦めてしまう前に、地域の窓口として瀬谷アクロスデンタルクリニックをご活用ください。
授乳の痛みや赤ちゃんの体重増加、舌の動きなどで気になることがあれば、お気軽にご相談ください。エビデンスに基づいた評価を行い、必要な専門医療へスムーズにお繋ぎします。
【参考文献・エビデンス】
1.AAO-HNS Clinical Consensus Statement (2020): 米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によるコンセンサス。母乳育児に悪影響がある場合、舌小帯切開術が安全な選択肢であるとしています。
2.American Academy of Pediatrics (AAP) Guidelines: 米国小児科学会。母親の乳頭痛や乳児の成長不良の原因となる場合、診断と治療の対象となると記載しています。
3.Academy of Breastfeeding Medicine (ABM) Clinical Protocol #11 (2021): 国際母乳医学会による新生児舌小帯短縮症の評価と管理ガイドライン。
瀬谷アクロスデンタルクリニック
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