2026年6月23日
メディアが報じる「コンビニ比較」の本質とは
「歯医者さんはコンビニの数より多い」というフレーズを、ニュースなどで一度は耳にしたことがあるかと思います。
確かに数字上は、全国のコンビニが約5.7万店であるのに対し、歯科診療所はそれを上回る数が存在してきました。
しかし、日常の利便性を追求する商業施設であるコンビニと、お口の健康と人生を守る医療機関である歯科医院を単純に数だけで比較すること自体には、本来あまり意味はありません。
私たちが今注目すべきは他業種との比較ではなく、記事でも指摘されている「歯科医療の本質的な変化」です。厚生労働省のデータによると、歯科診療所数は2016年の6万8940施設をピークに減少に転じており、歯科医師数も減少傾向が始まっています。
この背景には、日本の歯科医療が「虫歯治療」から「予防」へと大きな転換期を迎えている現実があります。
データが証明する「虫歯激減」の背景
なぜ、治療の需要が下がっているのでしょうか。同記事がひも解く厚生労働省の調査では、非常に興味深いデータが示されています。
5〜9歳で虫歯(治療済み含む)がある人の割合:
1999年の24.3% ➡ 2024年には4.2%へ激減
10〜14歳の割合:
1999年の69.7% ➡ 2024年には26.7%へ減少
この劇的な減少の背景には、フッ化物(フッ素)配合歯磨き粉のシェアが約92%まで上昇したことや、国民1人あたりの砂糖年間消費量がこの20年余りで約2割減少したことなど、ご家庭での「予防ケアの浸透」が明確な数値として表れています。
つまり、「悪くなってから治す」時代はすでに過去のものとなりつつあるのです。

大人が直面する「沈黙の病気」歯周病のリスク
一方で、大人の歯科医療において深刻さを増しているのが、歯を失う原因の第1位である「歯周病」です。
歯周病は40代から有病率が大きく高まりますが、初期の自覚症状がほとんどないため「沈黙の病気(Silent Disease)」と呼ばれています。近年の報告では、その発症ピークは30代から始まっているとも言われており、厚生労働省も2024年度から歯周病検診の対象年齢に「20歳」と「30歳」を新たに追加し、若年期からの対策を強化しています。
科学的根拠(エビデンス)が示す予防歯科の力
では、定期的な予防ケアを行うことで、私たちは実際にどれだけ歯を守ることができるのでしょうか。
予防歯科の先進国であるスウェーデンのアクセルソン教授らが世界に示した、「30年間にわたる長期臨床研究」という有名な学術エビデンスがあります。
この研究では、歯科医院で定期的なプロフェッショナルケア(PMTCや適切なブラッシング指導)を継続して受けたグループは、30年間という長い歳月の中で失った歯の数が、平均してわずか「0.4〜0.7本」にとどまったことが実証されています。
適切な予防管理さえ行っていれば、加齢によって歯を失うリスクは科学的にほぼ最小限に抑えられるのです。記事の中で東京科学大学の相田潤教授が提言している「『歯が痛むから受診』ではなく『痛くなくても受診』を浸透させることが大切だ」という言葉は、まさにこの科学的根拠に基づいています。
これからの時代を賢く生きるための「健康投資」
国がいま、若年層からの歯周病検診を強化しているように、日本の医療政策全体がこれからは「治療」よりも「予防」へとさらに舵を切っていくことになります。
社会保障費の逼迫を背景に、今後は「普段から予防に努めている人」と「そうでない人」との間で、疾患にかかった際の自己負担のあり方に格差が生まれる未来も、決して遠い話ではないと当クリニックは考えています。
だからこそ、今から定期検診を「習慣」にしておくことは、将来の体と健康を守るだけでなく、大切な資産を守るための「最も賢く、確実な自己防衛(健康投資)」でもあるのです。
瀬谷アクロスデンタルクリニックから皆様へ
当クリニックでは、根拠に基づいた予防歯科を一貫して実践しています。
これからの歯科医院は、「痛い治療を我慢して受ける場所」ではなく、「科学的なアプローチで、将来の健康と美味しい食事を賢く守る場所」です。
プロである歯科衛生士による丁寧なメンテナンスと、患者様一人ひとりに合わせたセルフケアのご提案を通じ、私たちは皆様が生涯ご自身の歯で笑顔で過ごせるようサポートいたします。最近、検診から遠ざかっていた方も、ぜひこの機会に「痛くない定期検診」から始めてみませんか?
【参考文献】
1.日本経済新聞 2026年6月21日配信記事「コンビニより多い歯科医が減少 ケア浸透、虫歯治療から予防にシフト 1億人の未来図」
2.厚生労働省「歯科疾患実態調査」
3.Axelsson P, Nyström B, Lindhe J. The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. Journal of Clinical Periodontology, 31(9), 749-757, 2004.
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